横たわる絶望のむこうに見える光「アトムの光」新居昭乃
「すべての空の色を
覚えている 胸の奥に
今テレビに映るアトムの雲 広がるの」
新居昭乃さんの【空の庭】というアルバムを、2011年くらいに、買った。私は、「東京アンダーグラウンド」EDテーマ「覚醒都市」を聞いて以来、新居昭乃さんのことを「とても好きと言うほど情熱を傾けるわけではないけど、生活の片隅に置きたい曲を作るシンガーソングライター」と思うようになった。
ということで、急に新居さんの曲を「アルバムで」生活のかたわらに置きたくなった私は、中古屋で「なんでもいいから新居さんの曲を」と思って購入したのが、この「空の庭」だった。
「熱を計るように
あなたは私に手をあてて
睫毛の先を噛む
朝露を口に含むように」
アルバムは、全体を通してなんの変哲もないものばかりだな。と思った。現在よりもすこしブラックな要素が強く感じる。でも、どれもおだやかで、実に新居さんらしく、きっと「あとからじわじわ」きいてくるだろう、そう思った。
私は通勤途中で何度か繰り返して聴いては「どれがじわってくるかな」と構えていた。
そして、最終的に一番じわって、ダントツで好きになったのがこの「アトムの光」である。
「小さな命が芽生えてる
このからだがただ悲しむの
テーブルにはコーヒー
他になんにもないこんな朝に
何を残せばいい?
そっとふたり抱き合うけど
目覚める街の隅で
鳥は今日も鳴いている」
全体的に、穏やかで明るいような曲調だが、あきらかに影のある曲である。
「アトムの光」とは何のことだろう、と思って調べてみると、出典もとはあきらかではないが「チェルノブイリ原発事故」のことを暗喩しているのだとか…?
「遠い国の丘の
地雷の上にも咲くアザミ
そんなふうにいつか
私たち強くなれるかしら」
奇しくも、2011年3月を境に、日本は「チェルノブイリ」に続いて「アトムの光」で表現されているこの世界に、なってしまったのではないか。
新居さんがこの曲を作った時は、そんなことを予想もしていなかっただろうに。
「窓を開けたら空は
この部屋の中まで照らしてくれる
そして何も知らずに生まれる生命を
迎えてくれる」
胸が苦しくなってきた。
私たちは、この世に、次の命を作っていいのだろうか。そんなことを考えてしまう。
私は神さまが『いる』と信じている見地に立っている。次に命をつなぐべきなのか、私たちに示してほしいと願っている。
「見て アトムの光
痛いくらい青い空も
ささやかな夢さえも燃えてしまう」
「幼い日の夕焼け
あなたと見た雨の夜明け
すべての空の色を覚えている
いつまでも」
「すべての空の色を 覚えている いつまでも」
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