「僕は、すべてに重力を感じてる」―――Wolf's Rainを観ていたころ、私は何を考えていたのかな。
Wolf's Rain、というアニメを昔観ていた。中学生か高校生だったと思う。主人公の美系青年たちはすべて「狼」という設定はなかなか興味深く、ストーリー自体はそこまで面白いモノではなかったが、絵や色彩の美しさは抜群だった。
「雰囲気」そのものが好きなアニメだった。
特に、OPもEDもカッコよくて、今でもたびたび聞き返す。EDは、私が石川智晶さんと椎名林檎さんの次に好きな歌手、坂本真綾ちゃんの歌だ。
「Gravity」
どれだけ歩き続けてきたのかな
明日は幾度も遠のいて
昨日に別れも告げないままに
この手に握り締めてる想いはまだ確かだろうか
私がウルフズレインを初めて見た日は、雨だった。そのときはまだ私はお父さんの部屋でテレビを見ていて、姉と一緒に色んなアニメを観るのが休みの日の日課だった。
私は、上半身を寝転ばせて、ガラス戸に足を立てかけながら見ていた。…たぶん、ひざの裏がかゆかったから思う存分掻くためだと思う。
あのころ私は、とにかく無力だった。
それとも涙に惑わされてしまった?
もし明日の今頃
雨が霧に変わるなら
その向こうには もうひとつの今日がある
誰かがどこかで僕を呼び続けてる
ずっと探し求めてる その場所に辿り着けるかな・・
アニメの向こうに広がる世界は、とにかく荒廃していて、でも主人公たちは「目的」を持って必死に行動している。
私にはわからなかった。自分も、世界が荒れ果てて必要に迫られればこんな風に何かを追い求めてはしることができるのだろうか。そのときは言葉にできなかったけど、そんなことを思っていた気がする。
私は確かに歩き続けていた。生きているのだから。でも、ここまで来たのは流されていたにすぎないことも知っていた。屋根のある家に住んで、両親もいて、食事も十分に与えられて。
一時期はアトピーの悪化で、あまりにも生きるのがつらかったこともあったけれど、それは「乗り越えた」わけではなかった。自分がそんな劣った体で生き続けなければいけない理由がわからなかった。
自分がどこへ向かって歩けばいいのか、まったく見えなかった。
月まで届く歌声が闇を照らして僕を導く
そこはきっと重力ゼロの世界
足に絡みつく痛みを振りほどいたその先に
道はただ語り続ける”さあ行くんだ”
本当に誰かが待っているの?
”さあ行くんだ”
情緒的なメロディーと、私の退廃的な思考がマッチするかもしれない。真綾ちゃんの曲は明るい歌も多いが、私はこれくらいのほうが好きだ。
何かに強く引き寄せられて
僕は全てに重力を感じてる
僕は、全てに重力を感じてる。