私が葬儀の仕事をしながら考えていたこと~お通夜の空気と朝の支度~
《前回↓》
お通夜の空気が好きだった。
私は「暗くなってからの仕事」が醸し出す「非日常感」が、どこか好きだったのだ。お通夜の接待当番と言うのは、大体前日から当日の昼過ぎまでに決まる。と言っても、私は趣味もなかったし家に帰ってもなにもすることがない。だから、割り当てられるのはイヤではなかった。
ただ、とても体力を使う仕事なのだ。喪家とスタッフとの間を奔走して、細かい要望を聞き、できることとできないことを検討して、できるサービスは実践していく。
お通夜~式と担当したらもう次の日には休みたい。でも休みは月7日なのでそうもいかない。
だから、お通夜を連続して割り当てられることはつらかった。
でも、それ以外はなかなか好きだった。
朝、まだ寒い中、会館に入ってお湯を沸かす。喪主となる方が故人さまと同じお部屋で泊まっていることがほとんどだから、喪主様のお布団を上げることから式の当日の仕事が始まる。
ある程度お布団が片付いたら、コーヒーをお出しする。徳島県民はコーヒーが好きなので大体よろこんでくださる。朝は、夏でもホットの要望が多い。
寒い空気の中を漂うコーヒーの香り。美しい洋食器と畳の部屋の組み合わせは、ここが老舗の旅館なのではないかと自分で錯覚を覚えることもあった。自分の動きは洗練されているとは言い難いけれど、そういう「サービス」が提供できることはどこか誇らしかった。
(続く)